時の裏側から見えたものは

     喫茶店が大好きである。福岡にいる間にいろんなところでお茶をした。

     大丸デパートの1階、本館と新館の通路に面した「カフェ  オーバカナル博多」。行き交う人を見ながら珈琲を飲める。こういう店、大好き。通路の天井は吹き抜けだったのだろうか。もしかして雨が降っても大丈夫なのだろうか。通りに面したテーブル席の開放感は素晴らしいものだった。こういう店、東京で知らない。何度となく深呼吸をした。

     柳川の川下りを終え、船着き場近くのティールーム「River  Flow]で紅茶をいただいた。窓の外は柳のうす緑色で満ちている。葉っぱのやわらかさと色のやわらかさがとけあう。風に色が動く。こころが静まっていく。柳川のいちご、そらまめ、麦、イチジク、ぶどうなどのイラストの入った布のエコ袋を買う。

     西鉄久留米駅の通路にある「カフェティ久留米店」。歩き疲れたとき、その日の作戦をたてるときに行った。泊っていたホテルから、母の生まれたJR久留米駅へ向かうにはここを必ず通るのだ。珈琲だけでなくパンも食べた。運よく窓際に座れると、駅前のロータリーの広がりが見えて気持ちがいい。大事な休憩場所だった。

     博多駅天神地下街エスプレッサメンテ   イリー」。横長の細いショーケースに色鮮やかなデミタスコーヒーカップがずらっと並んでいる。見たこともない美しいものばかり。この中の一つで飲めたら言うことはないが、珈琲を他のカップでのんでいる時、この店の中にあの素晴らしいカップがある、その同じ空間の中にいると感じる。それだけでも味は5割増しになる。あれだけ数を色を揃えたのが楽しい。それは色がデザインが踊る感じだろうか。カップの大きさがデミタスサイズだからキュッと色が映える。残念ながら、売ってはいませんと言われた。ここの店も地下でありながら、行き交う人を見ながら飲めるようにテーブルを置いてある。私はこういう作りが大好きだ。でも地下では今まで見たことがない。テーブルの向きをどうするか。お客の視線を、何を見ながら珈琲を飲めるようにするかで雰囲気は俄然違ってくる。いきいきと変化する。博多は勉強になる。

     アミュプラザ博多5階「エスプレッサメンテ   イリー」。今まで気がつかなかったがここもイリーだ。そういえば入口のガラスケースに色鮮やかなデミタスカップが少しあった。この店の面白いところはなんといっても総ガラスのおおーきな窓に、これまたおおーきな時計の、ローマ数字や部品の歯車の裏側が見えるところだ。不思議な世界に迷い込んだ気分。大きさからの錯覚、裏側に身を置くことからの錯覚。ガラスの向こうには、立ち並ぶ背の高いビルと抜ける大空。私はいっそ鳥になり、この空の向こうに飛んで行こうか。コーヒーはどうする。もちろん一杯飲んでからだ。福岡の大空が呼んでいる。いざ!