「じゃあいったい幾つ実をつければいいの?」

 今、梅をはじめベリー系など色んな種類の実のなる季節だ。微妙に時をづらして、あるいは重ねてここ一ヶ月ほど続いている。
 うちの庭でも少しだが、苺がとれた。小粒だが、なった時はとても嬉しい。最初はとれたものは食べた。甘みが少々足りなくても自前のものは割り増しして美味しく感じる。でも毎日だとだんだん飽きてくる。我ながら贅沢なと思うが実際そうなのだ。 
 スーパーで買ってくるのとは色んな意味で違う。まず当たり前だが自分で収穫しなければならない。ゴミ出しの日であっても、出かける日であっても、日差しの強い日であっても。そしてひとつひとつにこれは食べるか却下するかの判断をしながら収穫しなければならない。美しいものがほとんどの苺狩りとは違うのだ。虫にもう食べられてしまったものも、苺の底辺を見なければわからない。
 収穫したものは鮮度が命。さっと洗い土や小さい虫を落とす。ヘタを切り落とし、傷んだところがあれば削っておく。すぐ食べたい一番いい苺とジャムでも充分楽しめるものとに分ける。ジャム用の苺はジプロックに入れ冷凍する。
 収穫してからここまで大体1時間強。これが毎日。さすがにきつくて、途中から一日おきにした。もうこの頃には最初の苺の実を見つけた時の喜び、嬉しさは消え失せている。仕事だ。食べるための仕事。
 毎日食べる量だけが収穫出来るのは楽しくて嬉しくて有難い。それ以上収穫出来ると、ジャムが出来るなとやっぱり嬉しいし有難いと思う。でもこの時期、続くのだ、次から次へと。大変だと思うならやめればいいとも思う。でも店先でプラムを見れば、ちょっとだけジャム作ろうかなとやっぱり思ってしまい、結局買う。
 果物が沢山採れる所に住んでいる人は、たとえ作ることが大好きでも、分量があまりにも多く、せっかく作っても今は食べる物が豊富にあるのでちゃっちゃとはけていく訳でもなく、作る喜びよりもやらなくちゃ感のほうが強いと聞いたことがある。私は苺でほぼ1週間で音をあげた。苺を冷凍するにも冷凍室が満杯になってしまったのだ。ジャムの瓶も買い足さないと足りない。コロナで外に買いに行くのに二の足を踏む。
 庭にブラックベリーが実をつけジャムで楽しんでいたことがある。でもあれは蔓で際限なく伸びていくのだ。収拾がつかなくなって結局撤去した。外国でブラックベリーは駆除対象の木になっている国があると聞いた。切ないがわかる。
 「じゃあいったいどれ位実をつけるのだったらいいの?」ブラックベリーの声が聞こえてくるようだ。
 ん~、ほどほどかな。